関西圏の家庭電気料金、東日本大震災前から30%上昇

2014年12月25日 <日本経済新聞>

関西電力が再値上げを申請したことで、関西圏の家庭や企業の負担は一段と増す。来年4月に家庭向け電気料金は 平均10%程度上がる見通しで、東日本大震災前と比べると上げ幅は30%に達する。コスト削減をさらに進め て上げ幅圧縮を示唆するものの、子会社の売却など抜本的なリストラには消極姿勢を崩さない。価格の安い新電力への流出が加速しており、経営再建の道のりは半ばだ。

関電は24日、家庭向けで平均10.23%、企業向けで13.93%の値上げを政府に申請した。年明けから経済産業省 の専門委員会が申請内容を査定する。追加のコスト削減を求められるため、上げ幅は申請より縮む。査定が長引 けば実施は5月以降にずれ込む可能性もある。

申請通りになれば、家庭向けのモデル料金(月間使用量300キロワット時)は月8355円と震災前より約2千円上 がる。原油価格は秋口からぐっと下がったものの、為替相場が円安に振れており調達価格の下げ余地は縮まりそ う。毎月の燃料調整を加味しても、来春の値上げは避けられない。

企業向けのモデル料金(高圧で契約電力820キロワット、月間使用量23万キロワット時)は1カ月あたり約519 万円と現在と比べて54万円上がる。全国10電力の中で最も高くなりそうだ。八木誠社長は24日の記者会見で「価格競争力が下がるのは大きな問題。原発再稼働に全力を尽くしたい」と語った。

4月の消費増税に伴う駆け込み需要の反動で、関西の景気は厳しい。消費をさらに冷え込ませかねない電気料金 を上げるには「関電自身が身を削る努力をするのが不可欠」(経産省幹部)だ。関電は来年1月から会長と社長 の役員報酬の減額幅を70%から75%にすると公表したが、現時点でその他の経費削減策には触れずじまい。 子会社の売却は「電気事業会計とは別物だ」と反論した。

高浜3、4号機では年明けから地元自治体との再稼働への協議が始まる。安全審査が進んで再値上げを回避でき るとの見方もあったが、八木社長は「再稼働のめどは立っていない」と強調。先行きが見えない規制委の審査対 応も理由との考えを示した。ある有力OBは「規制委の意見に反論し、審査を長引かせた責任は重い」と現経営陣を批判する。

低料金で攻勢をかける新電力への流出はさらに増えるのが確実だ。2000年に始まった大口向けの自由化以降、 関電からの流出件数は12月1日時点で1万1417件。流出量は251万キロワットと原発2基分にあたる。