関西電力、新電力へ顧客流出止まらず 4期連続赤字へ

2015年1月31日 <日本経済新聞>

関西電力の苦境が続いている。30日に発表した2015年3月期の販売電力量見通しは1364億キロワット時と、東日本大震災が起きた11年3月期から1割減る。節電が定着し、価格の安い新電力に切り替える企業も増えているため。4月に電気料金が再び上がれば顧客離れは一段と進みかねない。原子力発電所の再稼働頼みの経営は綱渡りだ。

14年4〜12月期の連結最終損益は666億円の赤字(前年同期は346億円の赤字)だった。原発が停止しているため、液化天然ガスなど燃料費が8777億円と635億円増加。 他の電力会社などからの電力購入は4460億円と435億円増えた。原発は停止中も減価償却費やバックエンド費用がかさむのも重荷だ。同日記者会見した八木誠社長は「経営効率化だけでは吸収しきれない額だ」と語った。

実際には、燃料費の増加以上に販売電力量の減少が効いている。燃料費の増加分は燃料費調整に伴う電気料金引き上げなどでほぼ吸収されたが、販売電力量の減少による実質的な減収額は920億円に上った。

14年度の販売電力量は4年連続で前年割れになる見込み。需給面の不安や電気料金の上昇で、家庭・企業とも節電の取り組みを強めている。家庭などへの販売量は521億キロワット時と震災前から11.5%減る見通し。工場など大口も843億キロワット時と8.6%減少する。

大口顧客は関電から新電力への切り替えが進む。自由化が始まった00年から今年1月までの解約は1万1805件、計256万キロワットに達した。特に昨年4月からの9カ月間で66万キロワットと全体の4分の1を占める。16年4月に電力小売りが全面自由化されれば、流出は加速する可能性がある。

15年3月期の最終損益は、1610億円の赤字(前期は974億円の赤字)と4期連続の赤字を見込む。税制改正で法人税率が引き下げられるため繰り延べ税金資産を一部取り崩し、赤字額は従来予想より350億円拡大する。

21日に開いた政府の値上げ審査会合では、顧問7人に支払う報酬(計4000万円)への質問が出た。八木社長は「一足飛びにゼロにすると業務に支障が出る」と制度廃止を否定。子会社の売却についても「グループの成長に寄与しない会社は積極的に売る」と述べるにとどめた。コスト削減をどこまで徹底できるかなお不透明だ。

「今年は存続と将来をかけた極めて重要な1年になる。原発再稼働で早期に事業を軌道に戻す」。八木社長はこう強調するものの、関電は各地で運転差し止めの訴訟を抱える。経営の安定を見通せる環境にはほど遠い。